1月28日、ウェンゲンの代替レースとなる、ワールドカップ男子スラローム第5戦が行われ、開幕戦ではゼッケン34番とノーシードだったイエンス・ビグマルクが、遂に表彰台の中央まで登りつめた。
アンドレ・ミューラー、マルクス・ラルソンに続き、スウェーデン勢はこれで今季3勝目という快挙だ。
今季のスラロームは大混戦だ。開幕戦こそ、ベンジャミン・ライヒ(AUT)が優勝し、順当なスタートと思われたが、その後は混戦が続いている。前戦でのベルトッドも含めて、「まさか」と思われる選手が表彰台の中央に登りつめている。こうした不安定な状況が続いているのは、雪不足の影響なのか、それとも何年かおきにスラロームにやってくる、過渡期を迎えているのだろうか?
日本勢は佐々木明(グローバル・エクステンド)と湯浅直樹(アルペン)が出場したが、いずれも2本目に進出できなかった。
写真上:優勝したビグマルクの滑り
写真中:キッツッビューエルは鬼門の佐々木明
写真下:調子の上がらない湯浅直樹
■□■ MICKYの現地レポート ■□■
雪不足に悩まされ、開催が危ぶまれたキッツビューエルだったが、直前に大雪が降り、予定通りスラロームのレースが開催された(高速系のコースは、さすがに今回の降雪だけでは間に合わなかった)。
もっとも、スラロームのコースも完全に用意できたわけではなく、いつもとは違ったコースでの開催。いつものコースと比べると、途中から滑降のコースへと向かう形に変更されており、全体的に斜面変化の乏しい平坦なコースとなった。
先週までは雨が続いた天候は、すっかり冷えて、レース当日も降雪に見舞われた。あまり期待していなかったコースコンディションだったが、思いのほか固く、各国コーチは口々に「なかなか良い」と言っており、レースはエキサイティングな展開となった。
レースは、今シーズン「ブレイクスルー」して、早くも第一シード入りした、スウェーデンのイエンス・ビグマルクが1本目のラップを奪いそのまま逃げ切った。
1本目の2番手に付けたのは、やはり登り調子のベルトッド(2本目途中棄権)と、とにかく新鋭がレースを盛り上げる。
地元のオーストリア勢で、もっとも期待された、1本目3番手のベンジャミン・ライヒだったが、2本目にタイムを伸ばせず5位に後退。その一方でスーパーコンビで優勝しているマリオ・マットが、2本目のベストラップで2位に浮上し、なんとか地元の面目を保った形となった。
とにかく調子の良いスウェーデン勢だが、これは地元オーレで開催される世界選手権も影響しているのだろう。そこで困っているのが世界選手権出場枠の問題。切符は4枚しかない中で、また悩ましい問題が今回勃発してしまった。
記者会見では「世界選手権は出るのか」とビグマルクはプレスに聞かれると、「まだ分からない。水曜日に決まる」と述べる。そして「それはコーチか、スウェーデンのプレスにでも聞いてくれ」と、自分でも驚きの様子であった。
スラロームは1月頭のアデルボーデン以来のレースとなったため、スラローマーにとって久しぶりの大会となった。各国のチームは雪を求めて転々、水、木曜日は各国ともインスブルックに近い「キューエル」に集結していた。今回、3位と健闘したアロイス・フォグル(GER)もその一人で、キューエルでベストなトレーニングができたことがよかったと言っているように、調整の難しい状況で、いかに良いトレーニング場所を確保するかが今後を占うかもしれない。
今シーズンは各国から若い選手が出てきている。日本勢もうかうかしてられない。
佐々木と湯浅はまだ調子がつかめてないのか、2人とも2本目に残れなかった(佐々木:32位、湯浅:56位)。佐々木にとって、キッツビューエルは、いつも鬼門の場所、複雑な斜面変化と片斜面の連続のコースは、本人に言わせれば「どう滑ってよいのか」というほど苦手にしている。
今シーズンは、雪不足によるコース変更により、いわゆる「片斜面のゆるゆるキッツ」ではないので、佐々木にもチャンスがあるはずだが、苦手意識は払拭できなかったようだ。
ところで、佐々木は今シーズンからインスペクションをするようになった。その理由は「結婚して頭を使うようになった」ということだ。
「どれだけ、途中まで速くてもアウトしたらゼロだから」と、戦略的にレースを戦うことを模索し始めている。
一方の湯浅は年明けから新しいスキーにチェンジしたが、トレーニングが足りていないこともあって、まだまだ掴んでいない様子だった。
明日はもう一試合行われる。ビッグなシーンが展開されることを望みたい。
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