3月10日、長野県・志賀高原焼額山スキー場でFISワールドカップ男子スラローム(第8戦)が行われ、トリノオリンピックの金メダリスト、ベンジャミン・ライヒが優勝した。2位には日本の佐々木明(ガーラ湯沢)が入った。佐々木は今シーズン2度目、通算3度目の自己タイの2位入賞である。
1本目5位につけていた皆川賢太郎(アルビレックス新潟)は2本目に攻めきれずに、14位に終わった。
なお、他の日本人選手は、湯浅直樹(北海道東海大)、生田康宏(東京美装)、岡田利修(天山リゾート)は1本目で途中棄権、花田将司(北海道東海大)は2本目に残れなかった。
■□ もう2位では喜べない喜ばしい状態 □■
1本目、8番スタートの皆川賢太郎が0.49秒差の5位、それに11番スタートの佐々木が0.57秒の6位に続く。第7戦シュラドミング、トリノオリンピックに続き、今回も2人が表彰台、いや優勝を狙う位置につけた。
2本目は「予想どおり」、気温の上昇でコースが荒れて1本目上位の選手が大いに苦しめられるレース展開となり、皆川がそのうちの1人に巻き込まれてしまった。結果的に皆川は14位と大きくダウンしてしまったが、その借りを今回は佐々木が返した。佐々木は荒れたコースを果敢に攻め、ゴールした時点で1位のタイムをマークした。
あとは、これを守れるかどうかに会場は一喜一憂した。1本目、佐々木より上位の選手、ステファン・ティソ(FRA)、皆川、カーレ・パランダー(FIN)、テッド・リゲティ(USA)、ライナー・シェンフェルダー(AUT)が、佐々木を上回れない。歓喜と興奮のるつぼの中、残すはライヒだけになった。
ライヒも荒れたコースに手こずり、0.57秒の貯金を、徐々に、確実に減らしていく。非常に微妙なタイミングでゴールラインを切ると、佐々木の名前は電光掲示板の1つ下の段に移されてしまった。
それでも2位、タイながら日本としては最高位だ。本来なら喜ぶべきポジションだが、会場の雰囲気は一瞬、完全に「敗北感」に包まれた。シュラドミングでの興奮、オリンピックでの感動と続き、もう我々アルペンファンは、残された最後の1ページでなければ喜べないという雰囲気になっている。
かつての名スラローマー、トーマス・シコラ(AUT)はこう言ったことがった。「オリンピックや世界選手権では3位まで、ワールドカップは2位なら負けも同然」と。
今の日本チームにも、そんな雰囲気が漂っている。2位はこれで3回目、オリンピックのあの0.03秒での4位も経験した。かつて2本目に残っただけで、チーム全体が舞い上がっていた姿はそこにはない。それほど強くなったジャパンチームの状況こそが、もっとも喜ばしいことが発見できたレースだった。
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